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不動産買い替え
(2010年11月号 VOL.112)


 先月、田舎にある自宅を売って、生活に便利なマンションを購入したいと、ご相談を受けました。
不動産の買替えには、いくつかの注意をしないといけないポイントがあります。
売る自宅も買うマンションも高額です。
ちょっとした行き違いで大変な損失を被ることもあり得ます。

今回のお客様は、自宅の買主が決まっていて、新しいマンションを千葉駅周辺で探したいというご要望で した。
数十件の物件を何日かに分けてご案内をし、それぞれの物件の問題点やメリットなどをご説明させて頂 き、ご一緒に比較検討をしたうえで、その内の一件を購入して下さることになりました。

ところで、買替えですから自宅を売却した資金でマンションを購入しますので、スケジュール調整が必要で す。
自宅が売れていないうちに、新しいマンションを購入する場合には、マンションのローンが組めるか?又、 しばらく売れない場合にダブルのローンを支払っていけるか?自宅の売却の目処は?もし、予定の価格 で売れない場合の資金の組み立てをどうするか?等など、解決しないといけない問題があります。

今回のお客様はマンションの購入前に自宅が売れていて、契約も済ませています。
この場合は、自宅の売買契約の「解約の可能性」を検討しながら購入を進めないといけません。
又、自宅の明渡し日と、マンションの入居日のタイミングと、売却代金と購入代金の「入出金のタイミング」 の調整をしなければいけません。
自宅は明渡さないとお金が入ってきません。ということは事前に引っ越しをしておかないといけませんが、 そのお金が入ってこないとマンションのお金を支払えず入居ができません。その調整です。

それで、自宅の売買契約書を見せて頂くことになりました。
まずは、自宅の解約の可能性を見ながらマンションの購入を進めないといけません。
不動産の売買には、手付解除による解約。ローン特約による解約。不履行による違約解約等がありま す。
自宅の売却の契約をしたからといって必ずしも引渡しまで無事に進むとは限らないのです。

手付解除とは、相手方が契約の履行に着手するまで、もしくは定められた期日までは、買主は支払った 手付金を放棄することにより、売主は手付金の倍額を支払うことにより、それぞれ契約を解除できる規定 です。
ですから、自宅を買ってくれた方が支払った手付金を放棄することによって契約をやめることができます。
マンションの購入を一方的に進めて、自宅が手付解除されては大変です。
一方、自宅の売却を一方的に進めて、マンションの売主に手付解除をされると住むところがなくなってしま います。

手付金解除による危険負担を防ぐには、自宅売却の手付金の額とマンション購入の手付金の額を、合わ せておく必要があります。
こうしておけば、自宅が手付解除なれば支払ってもらった手付金が手元に残ります。マンションを手付解 除して手付金が返ってこなくても同じ額であれば差引ゼロで損をすることはありません。
同時に、マンションの売主が手付解除を申し出てくれば倍額が返ってきますので、自宅を手付解除して倍 額を支払っても同じように差引ゼロで損はしません。
手付解除は、相手方が履行に着手した場合または定められた期日が過ぎた場合はできません。ですか ら、履行の時期と手付解除ができる時期を、双方の契約で合わせておくことも重要なポイントです。

次にローン特約による解約の対策を講じておかなければなりません。
多くの方は不動産を購入する資金を銀行から借ります。
もし、この借入れができなかった場合、買主の資金計画が破綻しますので一般的な契約には、資金の借 入れができなかった場合は契約を白紙に戻す(ローン特約)が定められています。
今回の場合、自宅を買ってくれた方のローン借入れが大丈夫なのか?また、マンションを購入するローン の借入れが組めるのか?その可能性を探らなければなりません。
不動産ローンの借入れは、その取引の特殊性から@仮申し込み→A事前審査→B本申込み→C本審 査と2段階に申込みが分かれています。本審査で融資の承認が下りればD金銭消費貸借契約→E融資 実行と進みます。
事前審査で融資承認が下りれば、本審査で否決される可能性は低くなります。
幸い今回は自宅の買主さんのローンの事前審査が承認されていましたので、マンションのローンの仮申し 込みを進めるだけで済みましたが、ローン特約にも解除期限がありますので、その日付だけは合わせる ように致しました。
前述の手付解除や後述の違約金による解約は、解約した方にお金の損失が生じます。しかし、ローン特 約による解約は白紙撤回(移動したお金を返金し、元々契約が無かった状態に戻すこと)になりますの で、手付解除や違約解除に比べ可能性が高く、買替えでは一番気を付けないといけません。
買替えの場合には最低限双方の事前審査の承認をとった後に売買契約を締結することをお勧めいたし ます。

さて、最後の違約解除は手付解除やローン特約解除の期日が過ぎて解約を申し出る場合に売買価格の 何%かを支払う規定です。一般的には売買価格の10〜20%で取決めされます。
今回、自宅とマンションの価格が異なりますので、この金額は合わせられません。また、残代金決済まで は違約解除は出来ますのでこの解約は防ぎようがありません。
ただ、違約金は高額です。
2000万円の物件の場合で200万円〜400万円にもなりますので、その金額を支払ってまで解約をするケ ースは極めてまれです。
私も今まで数百件の取引を行いましたが、違約金解除にあったのは一度だけです。その時は買主さんに 大変な不幸があったのでやむを得なかったと思っています。
同業者に聞きましても違約解除になる可能性は全取引の0.2〜0.3%ぐらいの確率だと思います。
今回は、契約から引渡しまでの期間が短いこともあり、この解約は心配することはないと判断しました。

さて、上記の3つの解約の他に、その契約に特別付加されている特約もあります。
今回のお客様の自宅売却の契約書の特約にはなんと「クーリングオフ」の規定が付いていました。
個人が売主なのにクーリングオフが付いているなんて、おかしな話なのですが・・・。

(南)
2010/11

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