ニュースレター

タケノコ
(2007年4月号 VOL.69)

この時期になると知り合いの職人さんが、いつになくソワソワしてきます。なぜかなぁと考えてみると、季節 は春。春の味覚の代表の一つといえばタケノコ。そうですタケノコ堀りの季節だからです。
そしていつも有り難い事に採れたてのタケノコを頂くのですが、タケノコは時間が少したつとすぐにアクが 出てきますので鮮度が命ですね。
タケノコは漢字で『筍』と書きます。竹かんむりに、10日を意味する『旬(じゅん)』という漢字から出来ていま す通り、10日もたてばそれなりの竹に育ち、2〜3ヶ月もすれば大人の竹に生長して、それ以上大きくなり ません。
なんと一日で120センチも生長したこともあるそうです。
地上に生えた竹の単体の寿命は種類にもよりますが大型の竹で10年〜20年で、開花して寿命を終えま す。その竹の地下茎は生き残り、再度新しい竹が誕生し、竹林を形成し続けるのですが、竹林の竹のほ どんどが一斉に開花することがまれに起き、竹林全体が枯れて絶滅の危機を迎えることから、昔から凶 事の前触れと恐れられたりしました。
マタケについては最近では昭和30年代から40年代にかけて世界中の竹林で全面開花した記録があり、 古文書にも多く残されています。その記録をたどると、マダケの全面開花周期はおよそ120年となるそう です。
モウソウダケは記録が少ないのですが67年くらいとされているようです。
そんな竹はイネ科タケ亜科のマダケ属に属し、マダケ属だけでも約75種もあるそうですが、一般的なタケ ノコと呼ばれるのは孟宗(もうそう)竹(ちく)の若芽のことを言います。
モウソウチクの名前の由来は、昔の中国三国時代、呉の人物である孟宗が病気の母親が冬にタケノコが 食べたいと言うので、雪の積もる竹林を掘ったところ、地中からタケノコが出てきたという親孝行話からき たそうです。
モウソウチクは日本のタケ類の中で最大で、高さ25mに達するものもあるそうです。タケノコの堀り方は、 地上に出る前のものを探して掘り出します。
味はご存知の通り大型で肉厚、白く柔らかで、えぐみも少なく、甘味を含んだ独特のうまみと、歯ごたえが ありますね。
その他に代表的な種類として真竹(まだけ)、淡(は)竹(ちく)があります。モウソウチク・マタケ・ハチクの見 分け方は図の通りです。
マダケやハチクの採取はモウソウチクのタケノコ堀りと 異なり地上に出てきたばかりのものを切り取ります。
マダケは別名『苦竹』とも呼ばれ、マダケタケノコはアク が強く苦いといわれるそうですが、肉質が硬めでさっぱ りした味です。
関西、特に京都に多い種で、皮は毛が無く、黒い斑点が あり、民芸品や包装用に用いられます。
ハチクは5月頃、九州や関西地方から出回ってきます。 肉質が薄く、味はえぐみが少ない淡白な味です

さて、タケノコは土壌が柔らかいほど柔らかい物ができ ますので、京都などの名産地では地表にワラを敷き、土 を盛って柔らかいタケノコを作る工夫をしています。
そこで次に、美味しいタケノコの見分け方をお教えしまし ょう。
@皮につやがあり、うぶ毛のそろった、切り口のみずみずしいものを選び ましょう。
A大きさの割に軽いものは水分が無くなり、鮮度が落ちています。
B穂先が黄色でなく緑色になっているものは、育ちすぎでえぐみが強いの で避けましょう。
Cモウソウチクの場合は、形がずんぐりとした釣鐘型(砲弾型)で、外皮は 薄茶色でしっとりとしていて毛ばだち、先端は黄色く、切り口が白くてみずみ ずしいものがよいでしょう。根元の赤い粒々が小さくて少ないものほどやわ らかいそうです。

タケノコの調理法
皮付きのまま穂先の部分を斜めに切り落とし、さらに切り口から皮の部分を縦半分に1本の切れ目を入 れます。
たっぷりの水にぬか2カップと赤唐辛子2〜3本を 入れて強火にかけ、沸とうしたら落としぶたをし て、弱火で1時間以上ゆでます。
根元に竹ぐしがすっと通るようになったら火を止 め、ゆで汁の中でそのまま冷まします。
さめたらよく水洗いし、切り目から皮を開くようにし て皮をむきます。
●下ゆでの注意点
茹でたあと、すぐ水にあげると、たけのこにひびが 入ったり、身が縮んでしまうことがあります。
●ゆでるときにぬかを入れるのはなぜ?
たけのこのえぐみの成分は、ぬかに含まれるカルシウムと結合して 中和されるからです。カルシウムの多いわかめとの炊き合わせが良 いのもこのためです。
●たけのこを煮るコツ
たけのこを煮ものにするときのポイントは、一気に味付けしないことで す。一気に味付けしてしまうと、煮汁ばかりが甘くて、肝心のたけのこ は味気なくなってしまいます。砂糖やみりんなどの甘い調味料は先に 加え、しばらく煮こんで甘味が十分しみこんだあとに、しょう油や塩な どを加えるようにします。

最後に雑学として、『竹』の字を含む縁起の良い言葉にご存知『松竹梅』がありますよね!
もともとは中国の歳(さい)寒(かんの)三友(さんゆう)が日本に伝わったとされています。
歳寒三友とは、冬の寒さの中で耐える3種の植物のことで、松竹梅ことを指します。中国の宋代の文人が 描いた画題の竹・梅・蘭・菊・松などの中でも、松と竹は寒中にも色褪せず、また梅は寒中に花開くことか ら、これらは「精錬潔白・節操」という、文人の理想を表現したものとして好んで描きました。
やがて室町時代に日本に伝わり、日本では松は1年を通して緑を保つことから『長寿』の象徴として、竹は 真っ直ぐ勢いよく伸びることから『成長力』や『出世』の象徴として、梅はいち早く花を咲かせることから『生 命力』の象徴として縁起が良いとされ広まりました。
でもこの松竹梅という並びにもともと優劣はなく、縁起が良いと考えられはじめた順、あるいは語感の良さ で並んでいるだけだそうです。
確かに『竹松梅』じゃ可笑しいですもんね。ちくしょうぅめ!(笑)

(大)


2007/04
関連/

   
 ●