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瑕疵担保責任
(2007年9月号 VOL.74)
先日、お客様から「不動産の取引ではどんなトラブルがあるのですか?」と聞かれました。
当然ながら、トラブルが起らないように物件の調査から契約書の点検、売主様と買主様の調整など綿密
に行うのですが、不動産の取引は売出しの為の媒介契約から販売活動における商談、お話がまとまれば
売買契約、ローンの取組、残金決済にお引渡しと長期間に渡ります。
その長い期間の間には思わぬアクシデントがあったり、予期できない事が起ったりすることもあります。
契約前には、その土地にどんな建物が建てられるかの法的根拠を各市町村に調べに行きますが、行く度
に違った説明をされたり、出てくる担当者によって違ったことを言われたりして、困ったことが何度もありま
す。
また、取引が終わった後に問題が発生することもあります。
例えば、引渡し後にリフォームをして壁を剥(はが)したら柱が腐っていたとか
入居後に雨漏りがしたとか、
住んでみると近隣に問題の多い方が住んでいた等など
このように契約の時には分らなかった事が引渡後に発見されることがあります。
契約時には、発見できなかった目に見えない欠陥や問題のことを「瑕疵(かし)」といい、売主が買主に対し
てこの保証の責任を負うことを「瑕疵(かし)担保(たんぽ)責任(せきにん)」と言います。
今回は、この「瑕疵担保責任」についてお話し致します。
不動産の購入は一生のうちでおそらく一番高額な買物です。
人生の一大事業でもあります。
しかし、不幸にして購入した物件に、引渡後に欠陥を発見することがあります。
さて、このように後から発見した欠陥は売主に請求できるのでしょうか?
民法では、買主がその瑕疵を知ってから1年以内であれば損害賠償の請求ができ、その瑕疵のために
契約の目的が達せられないときは契約の解除ができる。と規定されています。
つまり、引渡から何年経っても欠陥を発見してから1年以内であれば、売主に請求できることになります。
但し、その瑕疵が引渡し時から発生していたことを証明しなければなりません。(引渡し後に発生した瑕疵
は当然保証の対象にはなりません。)
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しかしこれは、買主にとってはありがたい条文ですが、売主にとっ
ては引渡し後、何年経っても保証をしていることになり、長期間不
安定な地位に置かれることになります。
引渡後5年後もしくは10年経ってから「(発見してから1年以内の)
欠陥があったので保証して欲しい。」と買主から請求されるかもし
れないと思うと不安ですよね。売却したお金も怖くて使い切ること
が出来ないでしょう。
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そこで、中古住宅の取引ではこの瑕疵担保責任を引渡後2〜3カ月の期間に短縮していたり、築年数が
結構経過している(資産価値が認められないような)物件では免責(瑕疵担保責任を一切負わない)をして
いることが多いのです。
通常の欠陥であれば、2〜3カ月住めば発見できるでしょうし、あまりにも築年数が経過していると保証を
付けること自体が売主に酷である場合もあるからです。
しかし、この瑕疵担保責任の特約も売主がその欠陥を知っていながら買主に伝えなかった場合には適用
されません。
雨漏りしていることを知っているのに買主に伝えなかった場合には、何年経っても保証をしてあげなけれ
ばなりません。(一応、時効の規定はありますが。)
また、宅地建物取引業法では、不動産業者が売主の場合
には、『瑕疵担保責任を免責にする』とか、『引渡日から2年
未満の瑕疵担保責任とする』などの特約は無効とされてお
ります。
ですから、ほとんどの宅地建物取引業者は契約書に瑕疵担
保責任を引渡日から2年と記載していますね。
業者は専門知識もあり、それだけ物件に責任を持たなけれ
ばいけないとし、消費者を保護しているのです。
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ところで、瑕疵担保責任の期限を定めていても、その内容によって解釈の相違が出てしまう場合もあり
ます。
中古住宅は建築されてから年数が経っていますので、経年変化によって、不具合が出てくるのは当然で
す。
サッシの閉まり具合が悪い。とか、床や壁のたわみや傷など。
このようなものまで、瑕疵担保に含まれるのでしょうか?
せっかく、契約書で瑕疵担保の期間を定めていても、その内容によってもめては元も子もありませんね。
そこで、一般的には、雨漏り、構造体の腐食、シロアリの発生、給排水の不具合の4点に限っていること
が多いようです。
以上は、中古住宅の売買の場合です。
一方、新築住宅の場合は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の施行により、全ての新築住宅に
対して10年の瑕疵担保期間が義務化されました。
すなわち、新築住宅の請負人または売主は、住宅取得者に対して、構造耐力上主要な部分(住宅の柱や
梁基礎など)や屋根等の雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について、引渡の日から10年間その瑕疵を
修補するなどの義務を負うことになったのです。
これに反する特約を設けても、注文主や買主に不利な特約は無効となりますが、逆に保証期間を20年ま
では延長することが可能です。但し、自然劣化等によって生じた不具合については、保証されていません
し、売買の際に通常の点検で発見できたような欠陥についても、保証の対象外になりますので注意が必
要です。
なお、この法律の瑕疵担保責任の規定の適用を受けるのは、平成12年4月1日以降に締結された新築
物件の契約です。
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しかし、この「住宅の品質確保の促進等に関する法律」による10年保証でも、そ
の請負った業者が倒産してしまったり、業績が悪く修理工事をする資金的体力が
なかったりすると、結局は保証されないことになります。
得てして、瑕疵を作る(欠陥住宅を建てる)よう業者の方が、悪い噂が広まり業績
が悪化し倒産するケースが多いのでしょうね。
姉歯建築士の構造計算偽装問題でも、建築会社も販売会社も結局は倒産してし
まいましたからね。
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そこで、平成19年5月30日に新しい法律「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(長
い名前ですね。)通称「住宅瑕疵担保法」が公布されました。(平成21年11月29日までに施行)
この法律は、新築住宅を引き渡した建設業者・宅地建物取引業者に対し瑕疵担保責任の履行の為の資
金を「保険」または「供託」によって確保することを義務づけたものです。
ですから、もし雨漏りなどの欠陥住宅を売りつけた業者が修理をせずに倒産してもその保険もしくは供託
金で保証される事になるのです。
このように、新築住宅にしても中古住宅にしても、瑕疵担保責任を契約書や法律によって明確にすること
により、引渡後のトラブルが極力起らないようにしているのですね。
いずれにしても、不動産は大きな買物です。
取り返しのつかない買物ですから、トラブルが起らないよう、
買って良かった。
売って良かった。
と言えるようにしたいものですね。
(南)
2007/9
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