ニュースレター

構造力学 その.1
(2006年3月号 VOL.56)

日本全国を不安の渦に捲込んだマンションの耐震偽装問題ですが、札幌で一連の関係者以外の物件で もマンションの耐震偽装が発覚しましたね。「やはり」という思いですが、安全を重視しなければならない建 築物で、構造計算をごまかすなんて許せませんよね。もうこれ以上そのような物件が出ないことを祈る思 いです。
しかし、この"構造計算"って難しそうですよね。
専門家でも、偽装を見つけるのに何月もかかる場合もあると言いますからね。
そこで今回はこの構造計算の元となる基本的な構造力学のお話を致します。

大きなビルや橋などの建築物は一つの物体ですが、その中身は色々な部材で造られています。
例えば基礎や柱や梁、壁、床、屋根等などです。
台風や地震によってそれらの部材にはどのような力がかかるのでしょう?
また、人や器具などの重さはどのように影響するのでしょう?
建築物の各部材は、それら外部からの力や自重(建築物そのものの重さ)に耐えられるよう造らなければ なりません。
そこで、構造力学では各部材にかかる力を部分的に検討します。

建築物の各部材(構造的な力が掛かる)のほとんどのものは細長い部材で造られています。その代表的 なものは、柱や梁ですね。(屋根や床も部品部品に分解すると束や根太、母屋などのような細長い部品で 造られています。)
その細長い部材に掛かる力を考えましょう。
これらの部材に伝わる力には3の形態(応力の3形態)があります。
1)圧縮力(引張)
2)せん断力
3)曲げモーメント
です。
圧縮力は部材方向と同方向に働く力です。
せん断力は部材と直角に反対方向に働く力です。
曲げモーメントは部材に対して回転して働く力です。
構造物の各部材はこの力に耐えられるように設計しなければなりません。
台風や地震、また建物の自重や人の重さなどの力もこの3つの力に分解して考えます。

しかし、部材に3つの力が働くといっても、部材の接合の仕方によって検討をしなくてもよい力もでてきま す。
例えば、ローラースケートの上に木材が一本立っていると想像して下さい。
この木材に上からの力が掛かった場合、木材には圧縮力が掛かります。
しかし、横から木材を押しても木材に力は掛かりません。木材が動くだけです。
同じように木材を回転させても力が掛かりませんね。
この接合部を移動端(ローラー)と言います。
移動端を利用して造られている建築物に橋や高速道路があります。
橋の片方をこの移動端にして、もう一方を回転端(後述)で造っています。
この様な構造物を梁(単純梁)といいます。
力学を扱う上で基本となる構造ですね。
橋や高速道路は上からの力が掛かるので、その力を逃がしてあげられるような単純梁の工法が理に適っ ているのです。(その2へ続く)

(南)
2006/3

   
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