ニュースレター

犯罪収益移転防止法
(2008年4月号 VOL.81) 

2008年3月1日より「犯罪収益移転防止法」が施行され、不動産の売買時に売主様、買主様の本人確認 が義務付けられました。
これは、マネー・ローンダリングやテロ資金の供与を防止するために作られた法律です。

マネー・ローンダリングとは、犯罪により得た収益を、その出所を隠してあたかも正当な取引で得た資金で あるかのようにみせかけることです。
たとえば、恐喝によって得た現金で不動産を購入した後に、その不動産を転売して再び現金に戻し、現金 が恐喝で取得したものであることが分からないように細工をするようなことです。
マネー・ローンダリングが放置されれば、違法な行為によって得られたお金と、合法的に得られたお金と の区別がつかなくなります。また、犯罪者が自由に使える資金を手にして新たな犯罪を生み出すという悪 循環が生じます。健全な経済活動を維持するためにはマネー・ローンダリングを放置してはいけません。

また、現代社会は、テロの恐れにさらされています。テロには大きな資金が必要です。テロ資金は、正常 な商取引を装ったり、架空の名義を利用した取引を行うなどによって、支援者からテロリストに渡ります。 テロ行為の実行後、支援者を追跡できないように、資金の出所を隠すための取引が行われることもありま す。テロ資金供与の防止対策は、極めて重要なテロ対策なのです。
テロ活動は、国という枠を超え、人々の生活を破壊します。一部の国だけがマネー・ローンダリング規制を 強化しても、規制の緩い国がテロ活動の資金的基盤に利用されれば、安全で平穏な生活を守ることが出 来ません。我国も国際的な連携のもとマネー・ローンダリング防止対策を行わなければなりません。

こうした情勢を踏まえ、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)が平成19年3月 31日に公布されました。
本人確認などの措置が義務付けられる事業者を、特定事業者といいます。
特定事業者とされるのは、従来の金融機関等に加え、
ファイナンスリース事業者、
クレジットカード事業者、
宅地建物取引業者、
宝石・貴金属等取扱事業者、
郵便物受取サービス業者、
電話受付代行業者、
司法書士、
行政書士、
公認会計士、
税理士、
弁護士、
等(43の業種)です。

この特定事業者に対しては、
@本人確認及び本人確認記録の作成・保存
A取引記録の作成・保存
B疑わしい取引の届出
の3つの義務が課せられました。

本人確認の方法は、売主及び買主が実在する特定の人であることを明らかにし、現実に取引行為を行 い、あるいは、取引行為を行おうとしている相手方が、本人と同一であることを確かめるということです。
法令で定める本人確認のために使用できる書類は公的機関によって発行された書類であり、かつ、氏 名、住居、生年月日などの記載のあるものに限定されています。
株式会社の社員証など私人の作成した書類によって本人確認をしても、法による本人確認をしたことに はなりません。
具体的には、運転免許証の提示を受けることによって本人確認を行うことになるのでしょうね。
※運転免許証のほか、パスポート、健康保険証、国民年金手帳、住民基本台帳など。法人については、 当期事項証明書、印鑑登録証明書など。

そして、本人確認を行った場合その確認記録を作成し7年間保存しなければなりません。
本人確認を行ってもその取引に関する情報が記録され、保存されていなければ、犯罪収益の追跡を効率 的に行うことができず、マネー・ローンダリングを防止することができないからです。

また、これらの事業者の業務遂行の過程において、収受した財産が犯罪収益ではないかという「疑い」を 生じたり、犯罪収益を隠匿しようとしている「疑い」を生じた場合などには、速やかに行政庁に届け出る義 務が課せられました。

ところで、不動産を売買しますと銀行でローンの借入や振込みを行います。また、残金決済時には司法書 士に登記を依頼します。
特定事業者には、不動産会社などの宅地建物取引業者のほか、金融機関や司法書士も含まれていま す。
売買の売主、買主は売買契約時に本人確認の為、運転免許証などの提示と写しを取られ、借入時や代 金決済時にまた本人確認を行われ、登記の時に再度、本人確認を求められ運転免許証などのコピーを 取られることになりますので、マネー・ローンダリング防止の為とはいえ、これは少々大変ですね。

(南)
2008/4


   
 ●