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はやぶさ
(2010年6月号 VOL.107)

すでにご存知のとおり、今月13日深夜に探査機『はやぶさ』が大気圏に突入し7年間かけ任務を無事完 了いたしましたネ。
総航行距離はなんと約60億キロということですから、東京―大阪間120万回分です。すごいですね!っ て全然ピンときませんが(苦笑)
オーストラリアの夜空に、はやぶさ本体と切り離されたカプセルの二本の光跡が引かれたその瞬間は、 1981年に年4月14日に初めてスペースシャトルがエドワーズ空軍基地に無事帰還したときの感動を彷彿さ せるものでした。
そこで今回は『はやぶさ』や『イトカワ』について調べてみました。
はやぶさは地球と火星の軌道を横切るように一周1年半で公転している小惑星イトカワに着陸し、イトカワ の砂の採取に挑みました。

イトカワは、1998年アメリカ地球近傍小惑星探査チーム (LINEAR) により発見された太陽系の小惑星で す。
その小惑星が、はやぶさの探査対象となったことから、宇宙科学研究所は日本のロケット開発の父と呼 ばれる糸川英夫氏の名前を付けてもらえるようにLINEARにお願いしたところ、承諾してもらうことができ、 2003年に『イトカワ』と命名されました。

そのイトカワの地上には、すでに国際天文学連合(IAU)承認の3つの地名があります。
1つは、宇宙科学研究本部の所在地にちなんで相模原から名づけられたSagamihara Regio(地域)。
2つ目は、はやぶさの打上げ前のコードネームから採ったMUSES-C Regio。
そして3つ目は、はやぶさを打ち上げた場所、内之浦町から採ったUchinoura Regioです。

イトカワはラッコのような形をしており、長い部分で540m位しかない小惑星です。
そこに着陸して岩石を採取しようとするのですから、すごい技術ですネ。
はやぶさの下側についた筒の先が、イトカワの表面に触れると弾丸が発射され、砕けた岩石が筒の中を 上って容器に入るという予定でしたが、岩石採取の弾丸が発射できたかどうかは分からないそうです。
ただ、着陸の衝撃で表面の砂が舞い上がって採れた可能性があるそうです。

いよいよ帰還と思った矢先、2度目の着陸の後にエンジンの燃料が漏れて姿勢の制御が出来なくなってし まいました。
ソーラーパネルが太陽と違う方向に向い発電ができず、地球と交信ができなくなってしましました。
なんとはやぶさは広い宇宙を彷徨うことになってしまった訳です。
広い宇宙から探し出すなんて不可能なので、普通なら諦めるところですが、JAXAのスタッフは粘り強くは やぶさを探し続け、なんと7週間後にはやぶさからの信号を発見したのです。
ソーラーパネルに太陽光が当たり始めて発電が始まったこと、偶然アンテナが地球と交信できる方向に 向いたことで奇跡的に交信ができたようです。諦めていたらそこで終わっていたわけですから、スタッフも よく我慢強く耐えたと思います。
これで無事に地球へ戻れると思っていたら、また大きなトラブルが発生してしまいました。
推力を作る4機のイオンエンジンの内、なんと3機が故障してしまったのです!1機だけで地球に帰還する のは、もはや絶望的でした。
そこで、予め組み込んでいた2基をつなぐ予備回路、それも試験もしていないシステムに最後の望みをか け、故障個所の違う2基をつなぎ合わせて、1基分にしてみたところ大成功!無事に地球まで帰還できる 推力をえることができました。
遠い宇宙にある探査機を地球から遠隔操作で修理するなんてすごい技術ですネ。

少しずつ地球へと近づくはやぶさ。
大気圏突入の直前に、はやぶさから最後に撮影された、かすれた地球の画像を見たときは、まるで映画 ターミネーター2でボロボロになりつつも最後まで任務を完了したシュワルツェネッガー演ずるーT-800型タ ーミネーターのようでした。
もし、はやぶさに手が付いていたなら親指を立てて「任務完了!」と燃え尽きていったのでしょうネ

(大)
2010/06



   
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